狭間(はざま)の床

東京都府中市の外壁塗装、塗り替え業者、有限会社不二塗装です。府中市はもちろん、多摩市、三鷹市、拝島市など東京都多摩地区を中心に塗り替え、リフォーム施工を行っております。

長く商売を続けていくと、一風変わった場所の施工を依頼されることも有ります。
例えば・・・

「もしもし・・・」
「ハイ!不二塗装です」
「私、○○聖苑の鈴木(仮名)と申しますが、塗装の御見積をお願いしたいのですが・・・」
「はいありがとうございます。外装ですか?それともお部屋の塗装でしょうか?」
「・・・室内です」
「室内ですね、そうなると壁面、天井とか、木枠、扉など色々ございますが?」
「うーん説明が難しいですね」
「普段お客様がいらっしゃる場所でしょうか?都合の良い日をおっしゃっていただければお邪魔して実際に拝見いたしますが(^^)」
「そうですか、それはありがたいですね、それでは次の友引の日ではいかがですか?」
「(*_*)友引ですか。ああ、なるほど・・・」
「友引の日はご利用なさる方が少ないので・・・・」
「わかりました~(^_^;、友引、ともびき・・・と・・・具体的には何日になりますでしょうか?」
「近々では、来週木曜日となります」
「なるほど、それでは木曜日の何時頃がよろしいですか?」
「そうですね・・・あまり早い時間ですとまだ熱いので・・・午後遅くの方がよろしいかと」
「は~(^_^;)そうですか、たしかにまだ暑いですからねぇ・・では午後三時過ぎとかでいかがでしょう」
「はい。それではお待ちしております」

詳しい住所などお伺いしてから電話を切ると、隣に座っていた親父に○○聖苑の内部の見積頼まれたよ。と事の次第を説明しました。

「内部?」
「ウン。そう言ってた」
「内部なのに暑いってことは屋根裏かなにかかな?」
「さあ・・・」

さて、木曜日、約束の三時に聖苑に行くと物静かな風貌の喪服の男性が待っていました。

「所長の鈴木です。先日はどうもありがとうございました」
「不二塗装と申します。こちらこそどうぞよろしくお願いいたします」
「さてさて、それでは早速ご案内いたしますので、こちらへどうぞ・・・」
「恐れ入ります・・・」

軽やかな身のこなしで所長さんは廊下を進んでいきます。私はその後に続きながら

「実は私の母もこちらでご厄介になりまして・・・その頃と変わらない立派な建物ですねぇ」
「そうですか、お母様が・・では建物のこともある程度はご存じですね」

そう言って鈴木さんは静かに微笑むといくつかの鉄扉を通り抜け建物の奥へ入っていきます。
(階段を上がらないってことはサンルームじゃないな。事務所かリネン室?)
などと考えている私を従えてもう一つの鉄扉をくぐるとおもむろに

「こちらになります」
「は(@_@)?ボイラー室?」
「正確には火葬炉です。4基ございます」
「あ・・・火葬場・・・ですね(^^;)」
「こちらまだ熱いのでお気を付け下さいね・・・こちらの火葬炉からお骨を出して一時こちらでご用意を行うスペースがございまして」
「あ~熱いんですね(^_^; なるほど、なるほど・・・あら、確かに・・・アチ!ひょっとして(*_*)!」
「いえいえ、余熱でございます」
「あ~ビックリした。そうなんですか・・余熱ね」
「このように大変高温になる炉ですから、外に出られても大変まだ熱い状態ですので、この手前のスペースでしばらく余熱を取らせていただきます」
「ふむふむ・・・」
「その熱のせいもあるのでしょうか炉前ホールへ続く扉前の床の塗料がだんだん剥がれてまいりまして・・大変見苦しい状態となってきております(=_=)」
「あ、この両開きの扉の手前ですね・・この大きさ・・どこかで見たような気がします」
「こちらにおいで下さい(-_-)」

所長さんに案内されて入った隣の部屋。確かに見覚えが有りました。

「炉前ホールって・・・そうか、最後にお釜に入る前にお別れ言ったところだ。これって棺桶が入っていった扉か(T_T) なんとなく見覚えがあるわけだ。 なるほど、確かに塗料が剥けてきているのがここからもわかりますね・・」
「そうなのです。私共といたしましても、ご遺族の方々に対して大変心苦しいので改善出来ないものかと(=_=)」
「わかりました・・・すると施工できるのは?」
「友引の夜がよろしいかと・・・」
「時間的には・・・?」
「大体ですが・・・12時を過ぎればかなり炉も冷めます」
「なるほど・・・ なんとかしてみましょう」

築年数からいってそれほど熱の影響があるとも思えないけどな、今の塗膜を全撤去して・・・
かえって水性の方が良いかもだな、補修も簡単に出来るし。材料については検討するとして
問題は、施工時間が「丑三つ時」ってことだな・・(/_;)


一覧ページに戻る