みてはいけないものを見た 1

東京都府中市の外壁塗装、塗り替え業者、有限会社不二塗装です。府中市はもちろん、調布市、狛江市、立川市など東京都多摩地区を中心に塗り替え、リフォーム施工を行っております。

亡くなった先代の社長、つまり私の親父。
中学を出てすぐに夜学に通いながら家業を正式に手伝いはじめた(子供の頃から暇があれば手伝わされていた)、わけなのでキャリアとしては随分と長く働いてきたはず。
場数を踏んだ苔の生えた職人なのですが・・・とにかくおっちょこちょいで私が知っている限りでも足場からも何度か落ちています。
まあ、最後のケースはあのときの地震の影響で足場が揺れたので不可抗力ですが、私が子供の頃に落ちた1回は腕の骨折。しばらく現場に出られなくなったので退屈そうに家で過ごす親父の姿を覚えています。
そうなんです正月以外で「昼間家にいる親父」というのをこの時初めて見た気がします。それだけよく働く人。遊びにも行く。
祭りも大好き。
ほとんど家にいなかったし、どこかに連れて行ってもらったことも数えるくらいしかないですが当時の職人は日曜出勤も当たり前の世界だったのでさほど珍しい話ではないかと思います。

私が入社した頃に日曜日を定休としたのですがそれまでは盆と正月以外は休み無し。小学校から週休二日の今の子達にはとても想像出来ないブラック業界だったのです。
それはさておき、そんな親父について仕事を教わっていた見習いの頃なので足場は当然「丸太足場」引越前の「空き中古住宅」に二人して組み上げた足場を使って塗替工事を行っていました。
親父の仕事ぶりというのはキビキビ、サカサカ機敏に動き廻って常人の2倍ぐらいの速度で仕上げていくのはさすがですが、ちょっとせっかちというか気持が先に行って足元がおろそかになりがちなのでしょうか。

よく頭をぶつけたり物を落としたり、転んだりもするそそっかしい面も有りました。
その工事は終盤に差しかかかっていて親父は二階破風板の上塗りを、私は建物脇の一階面格子を塗っていた時だったと思います。
夕暮れの最後の追い込み時刻に突然『ドスン!』という音と共に地面が少し揺れました。

「なんだ??また何か落としたのかな?しょうがないな~(^_^;」

落したのが材料じゃなければいいんだけど・・・
ブツブツ文句を言いながら建物脇から通りに面した玄関側に顔を出すとちょうど通りかかった新聞屋さんのバイクが『キキッ』と止まりました。
白いヘルメット、黒縁眼鏡のおじさんがキッと視線をこちらに向けると

「今、向こうで人が落ちましたよ・・・(T_T)」

その顔面は蒼白でした。

「え!(@_@)人が?」

おじさんゆっくりとうなずくと

「うん・・上から落ちてきた。たった今(T_T)」
「(*_*)大丈夫でしょうか?」
「ダメだと思う・・・多分(/_;)」

そう一言残して走り去っていくスーパーカブ。
私は道具を放り投げて慌てて飛び出すと親父がいるはずの玄関へと向かいました。
駆けつけた先の地面には茶色のペンキまみれでうごめく親父が。

『良かった。とりあえず生きてる!』

これがその時の正直な気持でした。

後年東日本大震災の時に見た親父の姿は、今から思うとこの時の親父とそっくりでした。


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